ヘルペス

ヘルペス



ヘルペスというのは「単純疱疹(たんじゅんほうしん)」と「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」の2つを指す。いずれもヘルペスウイルスが引き起こし、症状もある程度似ているが、別の疾患である。一般にはヘルペスは帯状疱疹を指す場合が多いため、しばしば混乱を招くようである。

●単純疱疹(単純ヘルペス)

【症状】
古来「熱のはな」と呼ばれてきた皮膚病で、主に顔面、特に口の周囲に出る。最初は皮膚に赤く変化して、ムズ痒く(またはヒリヒリ)なり、数時間後にはその部分に小水疱が出現する。水疱は数個がかたまりとなり、次第に大きさを増す。
風邪などの病気や、海水浴やスキーなどの紫外線のストレスが、誘因となりやすい。
再発性であることが特徴で、人によっては毎週のように出る事もあるが、数年間出ないこともある。

このほか、陰部や(性器疱疹)角膜(ヘルペス性角膜炎)に出るタイプもある。性器疱疹は性行為で伝染するため、広義の性病と認識されている。

【治療】
そのまま放置しても、水疱がかさぶたに変化して一応は2週間ほどで自然治癒する。
しかし現在では特効的な抗ヘルペスウイルス剤(飲み薬・塗り薬)があり、これを用いて治療すると、治癒が早まるだけでなく、不快な自覚症状が大幅に軽減するので、出来るだけ早期に治療を始めることが望ましい。



●帯状疱疹(帯状ヘルペス)

【症状】
俗に「ヘルペス」として知られている。
単純ヘルペスとちがい、広い範囲に帯状に発赤と小水疱がでる。必ず体の右または左側だけブロック状に発生し、全身に拡がることは殆どない。
最初の2、3日はピリピリした痛みが先行し、その後水疱が出てくるパターンが多い。症状は個人差が大きく、水疱もパラパラ程度の人もあれば、非常に多くでる人もある。一般的には高齢ほど悪化しやすく、治癒が遅れる。
一般に大きな病気を経験したりすると出やすいといわれるが、ちょっとした疲れでも出る場合が多いようである。
この病気で最も困る症状は、痛みである。これも個人差が極めて大きく、ほとんど痛みのないこともあれば、下着の摩擦だけでもピリピリとした目を剥くような激しい痛みに悩まされることがあり、皮膚症状が治っても、なお数カ月以上にわたって痛みが続く場合もある(ヘルペス後神経痛)。
帯状疱疹は全身どこにでも発生するが、目の回りや耳の回りに出ると、角膜を侵したり聴覚・顔面神経に障害を残す場合があるので、眼科や耳鼻咽喉科の診察が必要となることもある。

【治療】
重症の場合は入院治療が必要であるが、多くの場合は外来で抗ヘルペスウイルス剤の内服・点滴などで治療する。適切な治療が受けられれば、10日もすればほとんど治癒するが、痛みが残る場合は引き続いて治療が必要となる。
一度罹れば、二度と罹ることが無いのが特徴である。但し、大きな病気で免疫が弱っている場合などは、再発することもある。




【解説】
単純疱疹と帯状疱疹は名称は似ているが、それぞれ別の疾患である。原因となるウィルスも同じくヘルペスウイルスであるが、細かい種類の分類があって、異なるものである。しかし互いに親戚筋にあたり、ウイルスの性質も似ている。
いずれの場合も、初感染は通常幼少時に経験しており、その再発という形である。単純ヘルペスの初感染では小水疱がでて、場合によっては高い発熱を伴い、まれに生命の危険を伴うこともあるが、ほとんど症状がでない場合もある。帯状疱疹の初感染は水痘(通称みずぼうそう)である。帯状疱疹の原因は、子供の頃に罹った、みずぼうそうということになる。

単純疱疹も帯状疱疹も、ウイルスは普段は神経に潜んでいる。神経は脳から末端の神経まで信号が伝わるようになっているが、物理的に1本の線ではなくて、中継基地のようなところがある。それを神経節といって(脊髄などにある)、そこには神経細胞の本体がある。ヘルペスウイルスはどういうわけか神経が好きなようで、初感染のあとも、終生神経の中で人間と共生する。神経節から皮膚にある神経の末端までは一本の線(一個の細胞)なので、再発時には細胞を伝ってウイルスが皮膚に到達して水疱などを作る。この時ウイルスが暴れて神経にダメージを与えるので、痛みが発生するらしい。

発症する前には痕跡程度の量しか無かったウイルスが、病気などの肉体的ストレスなどが誘因となって、増殖を始める。ある程度増えてくると、神経節のウイルスは体表面(神経末梢)へと移動して皮膚病変を形成するようになる。

ヘルペスウイルスが神経を好むとはいっても、単純疱疹と帯状疱疹では微妙にウイルスの振る舞いが異なる。
単純疱疹のウイルスは細胞の中にDNAの状態で潜んでいるといわれており、発症するときは、皮膚まで神経細胞の内部をレールに乗ったように容易に移動する。細胞の内部であるから移動が速く、また免疫のチェックを免れて何度でも再発を繰り返す。再発を止める方法は現在のところ存在しない。
一方帯状疱疹の場合は、主として神経細胞の外部が拠点となっており、神経節でウイルスが大量に増殖した後に神経を水先案内としながら、怒涛のように皮膚に押し寄せてくる。このため神経のダメージが強く、皮膚症状も大規模になる。しかしこうなると免疫システムが黙っておらず、鎮圧後は厳重な免疫監視体制が発動して通常は再発することはない。

いずれのヘルペスも、皮膚に症状が出ていないときには人に感染しない。しかし発生した水疱に免疫のない人(特に小児)が触れると、感染する恐れがある。単純疱疹の場合は大人でもアトピー性皮膚炎などの場合しばしば発症し、大きく拡がって独特の症状が出る(カポジー水疱様発疹症)。その他衰弱して免疫が弱った人や、病気の治療で免疫抑制剤などを使用している人には感染し易いので、注意を要する。


/*単純疱疹の対策*/

帯状疱疹の場合は通常一生に一回であるから対策など無意味だが、単純疱疹は何度でも再発を繰り返し、特に性器疱疹の場合は深刻な状況も考えられるため、何らかの対策を取っておく方が良いだろう。

何といっても早期治療である。
ウイルスが神経節から皮膚に到達してしばらくすると、痛痒くなって皮膚が少し赤くなる。放っておくと数時間以内に水疱が出始めるので、この時期が治療を始める好機といえる。理想的にはそれが真夜中であっても、気が付いたら直ぐに抗ウイルス剤を服用することである。それでもある程度の進行は止められないかもしれないが、確実に症状は軽くなる。抗ウイルス剤(飲み薬)を医師に処方してもらい、治療に使った残りを1〜2日分くらいを残しておいて常に携帯する。異変に気付いたら手元の薬を服用し、また処方してもらうということを繰り返すと良い。塗り薬でも良いが、やや効果が劣る。
また風邪に伴って口唇付近に発症した場合は、鼻をかむ際に出来るだけ擦らぬようにすること。擦ると確実に悪化するためである。

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