水虫・たむし

水虫・たむし



水虫とたむしは通称で、どちらも白癬菌(はくせんきん)という糸状のカビが皮膚に寄生して発生する皮膚病。医学的にはどちらも白癬(はくせん)と呼ばれる同じ皮膚病である。

しらくも
体、四肢ぜにたむし
陰部いんきんたむし
手水虫
足水虫
爪水虫
これらは場所が異なるだけで、全て同一のものと考えて差し支えない。しかしそれぞれの症状は大きく異なる。

【症状】
  • しらくも
    痒みや痛みは、ほとんど無い。フケが多くなり、病変部は毛が抜けて脱毛症のようになる。

  • たむし
    赤い小さな斑点から始まり、次第に同心円状に拡大する。中心部は茶色に変化して自然治癒するが、外縁は堤防状に赤く隆起する。痒みは通常あるが、無い場合もある。

    いんきんたむしは、通常は太股にできる。陰嚢にはほとんど出ない。陰嚢に痒みがあるときは、湿疹である場合が多い。

  • 足水虫
    足のゆびの間に初発することが多い。小さな水疱を作ったり、皮が剥けたりする。この段階では非常に痒い。その後次第に足全体に拡大していく。
    足の水虫は大きく分けて次の3種類ある。

    1. 足の指の間が剥けたり、じゅくじゅくするタイプ(趾間型
    2. 小さな水疱が足の裏や側面に出るタイプ(小水疱型
    3. 足の裏の角質が厚く硬くなり、ひび割れるタイプ(角化型

    これらは見かけは全く異なり、別の皮膚病のように見えるが、すべて水虫である。年月が経つと、ついには爪に菌が入り込み、爪の水虫に発展する。

    『水虫は痒い』と考えて、痒みが無いために自分は水虫ではない、と誤解している人が実に多い。しかし割合からすると、痒みの無い場合の方が圧倒的に多い。特に上記の3の角化型タイプや、爪の水虫では痒みは出ないので要注意である。

    足の水虫の場合、薬局で塗り薬を購入してすでに治療をしている人が多い。この場合、もしも症状が悪化したならば即刻使用を中止して、病院(皮膚科)で治療を受けなければならない。放置すれば、細菌感染などを併発して悪化する。水虫の薬によるかぶれを起こしている可能性があるからである。水虫の塗り薬は、足に使用するとかぶれを起こしやすい。

    水虫に良く似た『汗疱(かんぽう)』という皮膚病もある。治療法が異なるので是非区別すべき皮膚病であるが、皮膚科受診の前に売薬で治療すると診断を困難にする場合が多いので、未治療での受診をお勧めする。

  • 手水虫
    手の水虫は足に比べると、希である。特徴としては片側性が多く、足と異なり比較的限局性で手全部の場合は少ない。

    足の水虫と同じく3つの病形に分類できるが、一般には角化型が多いようである。しばしば手の爪の水虫を伴う。

    手の水虫は湿疹と極めて症状が似ている場合が多いので、必ず専門医で診断を受けること。手の水虫を湿疹と間違えて、長年見当違いの薬を塗っている人が多い。

  • 爪水虫
    爪も皮膚の一部であるから、水虫になる。爪の場合は白く濁るので、すぐそれとわかる。
    通常は先端から内部に白濁が拡大する。白癬菌に侵されると、爪はボロボロに変性し、進行するとパンを焼いたように膨れて分厚くなって、内部は軽石状になる。この傾向は親指で特に顕著に現れ、靴が履けなくなるほど爪が厚くなることがある。同時に爪の幅は狭くなり、全体として縮こまった感じになる。
【治療】
一般には、塗り薬で治療する。爪水虫や、足や手の角化型の水虫、また全身に及ぶたむしの場合は飲み薬が必要となる。多くの場合、最低でも半年はかかる。『治癒した』と思っても、なお1、2カ月は続ける必要がある。冬場になっても根気よく治療を続ける事が、完全勝利への道である。

【解説】
白癬菌は、角層と呼ばれる皮膚の表面にしか生息しない。よって水虫・たむしが内蔵にまで病変を広げる事は無いが、角層という人体で最も安定で安全な場所に住んでいる。だから表面にいるとはいっても、洗ったくらいでは取れないし、悪条件になっても(何年でも)生き延びる。実に迷惑な連中である。

白癬菌は適度な温度と、高い湿度を好む。靴を履く生活を続ける限り、人間は水虫と縁が切れないであろう。春先から夏にかけては水虫の最も活発な季節である。しかし冬になっても白癬菌は死滅するのではなく、活動を休止して冬を越すだけであるので、治療は暑い時期はもちろん冬季も続けることが望ましい。

猫などの動物からうつるものもあるが、水虫・たむしは原則として人から人へうつる。靴を長時間履くお父さんが広げる可能性が最も高い。風呂場の足拭きマットやスリッパから伝染しやすいので、別々にした方が良い。皮膚をむくのを習慣にしている人も多いが(これが意外に楽しいらしい)、むいた皮膚片をきっちり捨てないと、それが家族の足にくっついてうつす事になる。足を乾燥させるために、家にいる時は裸足でいるのは治療上は良いのだが、家族にうつす可能性は増えるので慎重にするべきである。

白癬菌は、ただ皮膚にくっついただけでは何も起きない。少なくとも2、3日は皮膚に留まり、適度な環境で生育する必要がある。その意味でも、常に体を清潔にすることは予防につながる。

実を言えば、売薬と病院で処方する薬とでは、それほど抗菌力に差は無いのである。ところが売薬で治療して少しも改善しなかったのに、皮膚科で治療を始めると、すぐに良くなる患者さんが多い。我々皮膚科医がよく経験する現象である。水虫・たむしの治療は長期戦であるので、自分だけで治療するのは精神的にも勢いというか、緊張感が続きにくいのではないだろうか。治療途中でかぶれや感染などのトラブルに陥ることも多く、素人判断では続けにくい面もある。また、薬を途中で適切に変更すると劇的に効果を示す場合もあるし、常に水虫の薬だけを塗っていれば良いわけでもない。ひとくちに水虫の治療といっても、案外奥が深いのである。



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